診療サポート部門
医療安全推進室
医療事故の防止や院内感染の対策、患者の安全確保を組織横断的に推進しています。
概要
特徴
医療安全管理・院内感染対策管理体制
医療事故報告基準
レベル | 内容 | ||
---|---|---|---|
A | レベル5 | 患者・受診者を死に至らしめ、又は死に至らしめる可能性が高い場合 | |
レベル4 | 患者・受診者に重大な不可逆的障害を与え、又は与える可能性が高い場合 | ||
B | レベル3 | b | 患者・受診者に濃厚な処置・治療(骨折等)を要した場合 |
a | 患者・受診者に中等度な処置・治療(縫合術等)を要した場合 | ||
レベル2 | 患者・受診者に観察の必要(バイタルサインの変化、検査の必要性等)が強化され、軽微な処置・治療(軟膏塗布、バンソウコウ等)を要した場合 | ||
レベル1 | 間違ったことを実施したが、患者・受診者には変化が生じなかった場合 | ||
レベル0 | 間違ったことが発生したが、患者・受診者に実施されなかった場合 |
インシデント・医療事故報告書提出件数推移
1カ月100床あたりのインシデント報告件数は全国平均と比較して低い結果です。コロナ病床の調整による影響などいくつかの要因が考えられます。一方で患者影響レベル別発生件数(下表)でみるとレベル0の報告19%を占めており、些細なことでも報告している結果も伺えます。医療安全推進室では、職員の医療安全に対する意識をさらに向上することを目標に、報告する文化の育成にも取り組んでいます。
患者影響レベル別インシデント発生件数推移
事象別インシデントの推移
施設・設備
- インシデントレポートシステムFANTOL(ファントルくん)
- 厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)
- 全入院部門
- 手術部位感染(SSI)部門
業務内容
医療安全活動の紹介
転倒転落WG
高齢者の中には筋力やバランス能力の低下により、既に転倒の危険性がある方がみえます。
病気やケガで入院すると安静による筋力低下や脳卒中などによる麻痺など心身機能の低下で転倒の危険性がより高まります。
病院ではこうした患者様が入院しており、転倒転落インシデントが多く発生しています。
患者様はご自身の意思で活動します。活動を抑制すれば転倒転落は減少しますが、患者様の意思に反して活動を抑制するわけにはいけません。
転倒転落WGでは、患者様に安全で安心な入院生活を送っていただくよう、転倒転落対策に取り組んでいます。
【取り組み】
①転倒転落事例検証
②医療安全ラウンド
③転倒転落対策の立案
④転倒転落マニュアルの作成、見直し
2010年度 パラマウントベッド 離床CATCH導入(10台)
2012年度 転倒転落WG設置
2013年度 医療版ピクトグラム運用開始
パラマウントベッド 離床CATCH説明会開催(年1~2回継続)
2014年度 離床センサーガイドライン運用開始
2017年度 転倒転落アセスメントチャート運用開始
2020年度 パラマウントベッド スマートベッドシステム導入(全病床)
2021年度 転倒転落防止ベッド環境システム運用マニュアル運用開始
2023年度 転倒転落防止ベッド環境システム運用マニュアル見直し
医療版ピクトグラム(スマートベッドシステム)
ピクトグラムを確認して、転倒転落防止のためのベッド環境を整備します。
パラマウントベッド 離床CATCH説明会
参考指標
全国平均値2.76‰ 中央値2.56‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書)
全国平均値2.99‰ 中央値2.99‰:日本医療評価機構2023年度可視化プロジェクト報告書参考
転倒転落発生率は2023年度は前年度と比較して高い結果になりましたが、全国的には低い発生率となっています。豊田地域医療センターでは、転倒転落防止対策としてスマートベッドシステムを導入し、患者さまの状況をいち早く察知し、加えてセル看護提供方式®による迅速な対応に努めています。
参考指標
全国平均値0.05‰ 中央値0.05‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書
全国平均値0.075‰ 中央値0.475‰:日本医療評価機構2023年度可視化プロジェクト報告書参考
2023年度は入院患者の転倒転落による骨折が8件発生し、発生率も全国平均と比較して、高い結果でした。全8例について事例検証を行い再発防止に努めています。患者さまが安全で安心な入院生活が過ごせるよう医療安全推進室は取り組んでいます。
参考指標
全国平均値3.12‰ 中央値2.90‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書
薬剤WG
薬剤インシデントのうち、最も多く発生しているのが薬の飲ませていなかったインシデントです。
多くの原因は確認ミスによるものが多く、薬剤WG・看護部セーフティ部会では確認ミスへの対策に取り組んでいます。
2019年度薬剤のダブルチェックの方法を見直すなどに取り組んできました。
こうした取り組みを続け、入院患者の薬剤インシデント発生率も低下しました。
発生件数は少ないのですが、患者様を間違えて薬(内服薬)を渡してしまう危険なインシデントも発生しました。思い込みや忙しさから患者様の確認ミスが発生しています。薬剤WG・看護部セーフティ部会では、こうした現場でのモニタリングと指導に取り組んでいます。
入院患者の薬剤インシデント発生率は2023年度は前年度と比較して低い結果となりました。
2023年度は現場でのモニタリングやアンケート調査結果をもとに薬剤の確認方法の見直しに取り組みました。また、「確認」をテーマに職員研修を開催しました。第1回目を効果的な確認方法とし、第2回目は、インシデント原因の16%を占める「思い込み」「勘違い」について認知バイアスを紹介しながら、効果的な確認方法の復習に取り組んできました。
画像読影レポートWG
豊田地域医療センターでは画像読影レポートWGは2021年度に設置し、画像読影レポートの未確認がないよう取り組んでいます。
①読影レポートの既読確認
画像読影レポートが作成されたら、依頼した医師に知らせる電子カルテシステムになっています。依頼医が見ていない場合、3日目に読影レポート確認する医師に、続いて上級医師に知らせが届くシステムになっています。さらに14日目に診療情報管理士、30日目に医療安全が未読レポートを確認し、画像読影レポートの見落としがないよう取り組んでいます。
②重要レポート対応確認
緊急性のある重要レポート(緊急性のある所見や将来的に予後に影響を及ぼす所見)は放射線科から依頼医に連絡する体制になっています。依頼医が不在の場合、担当医または部門長に連絡する体制になっています。
さらに重要レポートについては、読影レポートを確認して対応を行ったかまでを医療安全が全例確認しています。
③モニタリングの結果を画像読影レポートWG(1回/月)で報告しています。
既読中央値と14日超件数を毎月フィードバックしています。
14日超え事例については、事例検証を行い、再発防止に努めています。
重要レポートは全例患者さまへの対応までを確認しています。
院内外情報の収集から医療安全への取り組み
医療事故防止ニュース
また、医療安全管理委員会では毎月院外の医療過誤情報を掲載し、特に豊田地域医療センターでも過去に発生した類似事例と併せてポスター掲示を行っています。
医療安全推進のための啓発活動
医療事故防止スローガン
院内感染防止活動の紹介
1.手指衛生(手洗い・手指消毒)
当院では、世界保健機構(World Health Organization:WHO)の推奨する「手指衛生が必要な5つの場面」で実施に取り組んでいます。
毎月第1金曜日、感染防止対策チームにより手洗いラウンドを実施しています。
・手洗いの手順例(石けんと流水の手洗い)
出典:https://shop.saraya.com/hygiene/category/hand_hygiene.html
出典:https://shop.saraya.com/hygiene/category/hand_hygiene.html
2.サーベイランスの実施
目的:入院後に起こる尿路感染の約70-80%がカテーテル関連尿路感染である。膀胱留置カテーテルを使用する患者における細菌尿の発生リスクは留置1日あたり3-10%であり、留置30日目には100%の確率で当院では、膀胱留置カテーテルを留置している患者が多く感染リスクの高い高齢者・女性の入院も多い。全病棟で膀胱留置カテーテルを使用している患者数や感染率のサーベイランスを実施することで感染の発生頻度や感染対策の実施頻度が明確になり、感染を減らすための具体的な目標値を設定することができる。日常的な頻度を超えて発生していることを早期に発見し伝播の拡大や患者の重症化を予防するためにサーベイランスは重要である。今年度は、全病棟の器具使用比と感染者数を把握することとした。
1)R4年度 部位別中心静脈挿入数
・R4年度の当院の挿入数30件。(R3年度40件)
・部位別は内頚14件・PICC 7件・ポート4件・鼠径5件。他院からの既挿入39件、計69件の使用がありました。
・平均挿入数2.5件/月
今年度もMBP遵守率は100%達成しております。介助していた看護師のキャップ未使用が2件ありました。感染1件は挿入時の感染対策の可能性が指摘されております。医師だけでなく介助に当たる看護師においてもキャップの装着は必須となります。
使用比は4F病棟25~50パーセンタイル、5F病棟10~25パーセンタイル、6F病棟10パーセンタイル未満であり、使用状況に問題ありません。
4F病棟で感染3名(PICC、内頚、ポート各1件)の発生がありました。感染疑いは1例を除き血液培養検査されています。1例は血小板が低く状況的に難しい事例でした。
3.抗菌薬の適正使用
個々の患者に対して主治医が抗菌薬を使用する際、最大限の治療効果を導くことが出来ると同時に、有害事象(副作用や耐性菌の出現)を出来るだけ最小限にとどめ、いち早く感染症治療が完了(治療の最適化)出来るように、診療科の枠を超えた支援を行っています。
●抗菌薬の使用量調査
1)血液培養の検査件数、陽性件数
血液培養は血流感染が疑われる場合、早期診断が患者予後を決定するためにその診断ツールとしてあります。血液培養の陽性判定により、感染性の病因の存在を確認でき、起因菌を同定し、薬剤感受性検査結果からその細菌に効く薬剤を選択し、効果的な治療をすることができます。これにより患者予後の改善・入院日数の短縮・抗菌薬の不適切使用の防止に役立てています。
血液培養の実施においては 1 セットのみの場合の偽陽性による過剰治療を防ぐため、2 セット以上行うことが推奨されています。本指標は、血液培養を行う際に2 セット以上の検査が実施された割合を示しています。
血液培養2セット率年次推移
血液培養検査の採血時に皮膚に存在する常在菌などを混入させてしまうと、本来の敗血症の起炎菌とは別な菌での感染症と誤診されてしまう可能性があります。このため血液培養のコンタミネーション率は、2%以内が適切であるとされており、コンタミネーション率は低い値を維持して信頼できる結果を提供できよう努めています。
血液培養陽性率・コンタミ率年次推移
実績
医療安全管理研修会 実績
研修会開催 | 受講人数 | 受講率 |
---|---|---|
2020年度第1回医療安全管理研修会 | 職員467名 委託業者34名 | 99.0% |
2020年度第2回医療安全管理研修会 | 職員523名 委託業者39名 | 95.9% |
2021年度第1回医療安全管理研修会 | 職員507名 委託業者40名 | 99.0% |
2021年度第2回医療安全管理研修会 | 職員508名 委託業者26名 | 98.6% |
2022年度第1回医療安全管理研修会 | 職員536名 委託業者18名 | 99.2% |
2022年度第2回医療安全管理研修会 | 職員494名 委託業者24名 | 94.8% |
2023年度第1回医療安全管理委員会 | 職員541名 委託業者72名 | 98.5% |
2023年度第2回医療安全管理委員会 | 職員524名 委託業者65名 | 98.9% |
院内感染対策研修会
研修会 | 受講者数 | 受講率 |
---|---|---|
2020年度第1回院内感染対策研修会 | 職員435名 | 90% |
2020年度第2回院内感染対策研修会 | 職員450名 委託業者38名 | 99% |
2021年度第1回院内感染対策研修会 | 職員505名 | 99% |
2021年度第2回院内感染対策研修会 | 職員481名 委託業者28名 | 97% |
2022年度第1回院内感染対策研修会 | 職員532名 委託業者43名 | 97.4% |
2022年度第2回院内感染対策研修会 | 職員406名 委託業者20名 | 74% |
2023年度第1回院内感染対策研修会 | 職員541名 委託業者71名 | 95.8% |
2023年度第2回院内感染対策研修会 | 職員553名 委託業者41名 | 95.5% |