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診療サポート部門

医療安全推進室

医療事故の防止や院内感染の対策、患者の安全確保を組織横断的に推進しています。

概要

当院の医療安全推進室は、2007年4月に設立させた医療安全管理室から医療安全対策全般に係る業務を充実するため、2011年4月に医療事故の防止と院内感染の対策、患者の安全確保を組織横断的に推進するために新しい体制となりました。専従医療安全管理者、専従医療安全推進アドバイザー(医療安全・感染担当)、専任医療安全担当看護師長、専任感染担当臨床検査技師、専任感染担当看護師を配置して院長直轄部門として設置されています。

特徴

医療安全推進室では医療安全管理委員会、医事紛争処理委員会、セーフティマネージメント部会、医療安全調査検証会議、院内感染対策委員会、ICT委員会、事務局を担当してその業務を担い、横断的な取り組みを図っています。

医療安全管理・院内感染対策管理体制

医療事故報告基準

レベル内容
Aレベル5患者・受診者を死に至らしめ、又は死に至らしめる可能性が高い場合
レベル4患者・受診者に重大な不可逆的障害を与え、又は与える可能性が高い場合
Bレベル3b患者・受診者に濃厚な処置・治療(骨折等)を要した場合
a患者・受診者に中等度な処置・治療(縫合術等)を要した場合
レベル2患者・受診者に観察の必要(バイタルサインの変化、検査の必要性等)が強化され、軽微な処置・治療(軟膏塗布、バンソウコウ等)を要した場合
レベル1間違ったことを実施したが、患者・受診者には変化が生じなかった場合
レベル0間違ったことが発生したが、患者・受診者に実施されなかった場合
A:アクシデント/レベル3b~5、B:インシデント/レベル0~3a

インシデント・医療事故報告書提出件数推移

1カ月100床あたりのインシデント報告件数は全国平均と比較して低い結果です。コロナ病床の調整による影響などいくつかの要因が考えられます。一方で患者影響レベル別発生件数(下表)でみるとレベル0の報告19%を占めており、些細なことでも報告している結果も伺えます。医療安全推進室では、職員の医療安全に対する意識をさらに向上することを目標に、報告する文化の育成にも取り組んでいます。

患者影響レベル別インシデント発生件数推移

事象別インシデントの推移

施設・設備

  • インシデントレポートシステムFANTOL(ファントルくん)
  • 厚生労働省院内感染対策サーベイランス(JANIS)
  • 全入院部門
  • 手術部位感染(SSI)部門

業務内容

【1】安全な医療を提供するため、全職員を対象に医療安全、感染管理に関する研修会をそれぞれ年2回開催、医薬品安全管理と医療機器安全管理の責任者とも連携して研修の企画をしています。また、セーフティマネージメント部会やICT委員会では、年3~4回ミニ研修会を開き各部署へ伝達を行っています。さらに、新入職者の教育や看護助手研修等で職員の安全文化の醸成を図っています。
【2】各部署のセーフティマネージャーやICT委員中心となり、各部署の安全に関する監査や感染管理ラウンドをそれぞれ月1回実施しています。患者確認・ダブルチェック実施状況・手洗いや手袋の着用などの感染管理状況の把握や各マニュアルの遵守状況等を調査し指導を行っています。
【3】毎月の事故報告書の集計や事故事例の調査・検討を行い再発防止に努めています。
【4】日々の医療に関連した感染発症状況の調査と現場指導を行う他、病院感染サーベイランスを実施し、感染防止対策の評価・検討を行っております。また、アウトブレイク発生時は立ち入り調査を行い、状況にあった効果的な対策を指導し感染制御に努めています。
【5】感染防止マニュアル・事故防止マニュアルの整備や定期的な改訂を行い職員への周知を行っています。
【6】委員会(医療安全管理委員会・医事紛争処理委員会・セーフティマネージメント部会・医療安全調査検証会議・院内感染対策委員会・ICT委員会)の資料及び議事録の作成・保存、その他の庶務に関することを担い、企画や運営を行っています。
【7】医療安全に関することや感染管理に関する相談を患者さまや職員から受けています。問題解決に有用な情報資源を活用し、支援をしています。
【8】感染に関する情報や医療事故に関する情報を「ICTニュース、感染情報」・「医療安全推進室通信、医療事故防止ニュース、医療過誤情報」等で発行し、院内に最新情報の伝達に努めています。

医療安全活動の紹介

医療安全カンファレンス

医療安全活動は、現場の各部署セーフティマネージャーと連携を取りながら、カンファレンスやワーキンググループで現場での問題や対策の立案を行っています。そして、セーフティマネージメント部会にて情報共有を行い、現場での医療安全対策に反映させています。そして、医療安全管理委員会にて病院の組織的な取り組みとして、活動しています。

転倒転落WG

【病院での転倒転落について】
高齢者の中には筋力やバランス能力の低下により、既に転倒の危険性がある方がみえます。
病気やケガで入院すると安静による筋力低下や脳卒中などによる麻痺など心身機能の低下で転倒の危険性がより高まります。
病院ではこうした患者様が入院しており、転倒転落インシデントが多く発生しています。
患者様はご自身の意思で活動します。活動を抑制すれば転倒転落は減少しますが、患者様の意思に反して活動を抑制するわけにはいけません。
転倒転落WGでは、患者様に安全で安心な入院生活を送っていただくよう、転倒転落対策に取り組んでいます。

【取り組み】
①転倒転落事例検証
②医療安全ラウンド
③転倒転落対策の立案
④転倒転落マニュアルの作成、見直し
【転倒転落WG活動実績】
2010年度 パラマウントベッド 離床CATCH導入(10台)
2012年度 転倒転落WG設置
2013年度 医療版ピクトグラム運用開始
     パラマウントベッド 離床CATCH説明会開催(年1~2回継続)
2014年度 離床センサーガイドライン運用開始
2017年度 転倒転落アセスメントチャート運用開始
2020年度 パラマウントベッド スマートベッドシステム導入(全病床)
2021年度 転倒転落防止ベッド環境システム運用マニュアル運用開始
2023年度 転倒転落防止ベッド環境システム運用マニュアル見直し

医療版ピクトグラム(スマートベッドシステム)
ピクトグラムを確認して、転倒転落防止のためのベッド環境を整備します。

パラマウントベッド 離床CATCH説明会

当院の転倒転落発生率の推移

参考指標
全国平均値2.76‰ 中央値2.56‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書)
全国平均値2.99‰ 中央値2.99‰:日本医療評価機構2023年度可視化プロジェクト報告書参考
転倒転落発生率は2023年度は前年度と比較して高い結果になりましたが、全国的には低い発生率となっています。豊田地域医療センターでは、転倒転落防止対策としてスマートベッドシステムを導入し、患者さまの状況をいち早く察知し、加えてセル看護提供方式®による迅速な対応に努めています。

参考指標
全国平均値0.05‰ 中央値0.05‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書
全国平均値0.075‰ 中央値0.475‰:日本医療評価機構2023年度可視化プロジェクト報告書参考
2023年度は入院患者の転倒転落による骨折が8件発生し、発生率も全国平均と比較して、高い結果でした。全8例について事例検証を行い再発防止に努めています。患者さまが安全で安心な入院生活が過ごせるよう医療安全推進室は取り組んでいます。

参考指標
全国平均値3.12‰ 中央値2.90‰:一般社団法人日本病院会2022年度QIプロジェクト報告書

薬剤WG

豊田地域医療センターのインシデントで最も多く発生しているのが薬剤に関するインシデントです。
薬剤インシデントのうち、最も多く発生しているのが薬の飲ませていなかったインシデントです。
多くの原因は確認ミスによるものが多く、薬剤WG・看護部セーフティ部会では確認ミスへの対策に取り組んでいます。
【薬剤WG活動実績】
2019年度薬剤のダブルチェックの方法を見直すなどに取り組んできました。
こうした取り組みを続け、入院患者の薬剤インシデント発生率も低下しました。
発生件数は少ないのですが、患者様を間違えて薬(内服薬)を渡してしまう危険なインシデントも発生しました。思い込みや忙しさから患者様の確認ミスが発生しています。薬剤WG・看護部セーフティ部会では、こうした現場でのモニタリングと指導に取り組んでいます。

入院患者の薬剤インシデント発生率は2023年度は前年度と比較して低い結果となりました。
2023年度は現場でのモニタリングやアンケート調査結果をもとに薬剤の確認方法の見直しに取り組みました。また、「確認」をテーマに職員研修を開催しました。第1回目を効果的な確認方法とし、第2回目は、インシデント原因の16%を占める「思い込み」「勘違い」について認知バイアスを紹介しながら、効果的な確認方法の復習に取り組んできました。

患者様ご自身に名前を名乗って確認させていただいております。ご面倒を掛けますが、患者さま間違いを防ぐため、ご理解とご協力をお願いいたします。
2017年に発生した重大インシデントを共有するとともに、三方活栓・点滴資材の院内統一し未然防止対策に取り組みました。

画像読影レポートWG

全国的に画像読影レポートの未確認による医療事故が問題となり、多くの病院で対策の取り組みがされました。
豊田地域医療センターでは画像読影レポートWGは2021年度に設置し、画像読影レポートの未確認がないよう取り組んでいます。
画像読影レポートWGの役割
①読影レポートの既読確認
 画像読影レポートが作成されたら、依頼した医師に知らせる電子カルテシステムになっています。依頼医が見ていない場合、3日目に読影レポート確認する医師に、続いて上級医師に知らせが届くシステムになっています。さらに14日目に診療情報管理士、30日目に医療安全が未読レポートを確認し、画像読影レポートの見落としがないよう取り組んでいます。
②重要レポート対応確認
 緊急性のある重要レポート(緊急性のある所見や将来的に予後に影響を及ぼす所見)は放射線科から依頼医に連絡する体制になっています。依頼医が不在の場合、担当医または部門長に連絡する体制になっています。
 さらに重要レポートについては、読影レポートを確認して対応を行ったかまでを医療安全が全例確認しています。
③モニタリングの結果を画像読影レポートWG(1回/月)で報告しています。
 

既読中央値と14日超件数を毎月フィードバックしています。
14日超え事例については、事例検証を行い、再発防止に努めています。

重要レポートは全例患者さまへの対応までを確認しています。

院内外情報の収集から医療安全への取り組み

医療事故防止ニュース

身近なできごとで院内に早く周知し、注意喚起したいときに随時発行します。
また、医療安全管理委員会では毎月院外の医療過誤情報を掲載し、特に豊田地域医療センターでも過去に発生した類似事例と併せてポスター掲示を行っています。

医療安全推進のための啓発活動

医療事故防止スローガン

医療事故防止スローガン

医療安全管理委員会では、職員より事故防止に関してのスローガンを募集して、1年間の事故防止に向けての推進に取り組んでいます。

院内感染防止活動の紹介

ICT抗菌薬ラウンド

院内感染防止活動は、現場の各部署リンクナースと連携を取りながら、カンファレンスやラウンドで現場での感染対策のモニタリングを行い、問題点を挙げ、対策の立案を行っています。そして、ICT委員会で情報共有を行い、現場での院内感染防止に反映させています。そして、院内感染対策委員会にて病院の組織的な取り組みとして、活動しています。

1.手指衛生(手洗い・手指消毒)

医療安全推進室(感染担当部門)では、病院内での感染を防止するために、職員および患者さん、ご面会の方に手指衛生を推進しております。
当院では、世界保健機構(World Health Organization:WHO)の推奨する「手指衛生が必要な5つの場面」で実施に取り組んでいます。
毎月第1金曜日、感染防止対策チームにより手洗いラウンドを実施しています。
<手指衛生のポイント>
・手洗いの手順例(石けんと流水の手洗い)

出典:https://shop.saraya.com/hygiene/category/hand_hygiene.html

・手指消毒の手順例(速乾性アルコール製剤)

出典:https://shop.saraya.com/hygiene/category/hand_hygiene.html

2.サーベイランスの実施

●令和4年度 UTIサーベイランス報告
目的:入院後に起こる尿路感染の約70-80%がカテーテル関連尿路感染である。膀胱留置カテーテルを使用する患者における細菌尿の発生リスクは留置1日あたり3-10%であり、留置30日目には100%の確率で当院では、膀胱留置カテーテルを留置している患者が多く感染リスクの高い高齢者・女性の入院も多い。全病棟で膀胱留置カテーテルを使用している患者数や感染率のサーベイランスを実施することで感染の発生頻度や感染対策の実施頻度が明確になり、感染を減らすための具体的な目標値を設定することができる。日常的な頻度を超えて発生していることを早期に発見し伝播の拡大や患者の重症化を予防するためにサーベイランスは重要である。今年度は、全病棟の器具使用比と感染者数を把握することとした。
まとめ:R4年度全期結果、全病棟の膀胱留置カテーテル・器具使用比0.132%、昨年度は0.133%であり、昨年度使用比はほとんど変わりない。JANISの標準比感染比を用いたベンチマークと比較すると、器具使用比は50パーセンタイル以上70パーセンタイル未満となり全国の病院内科病棟の中央値より若干高い。尿路感染報告数は11件あり。感染率は1.92%となるため、JANISの標準比感染率を用いたベンチマークと比較すると50パーセンタイル以上75パーセンタイル未満となる。器具使用比、感染率とも少し高めになっている。引き続き早期に留置の必要性について評価を行い、抜去に向けて働きかけをしていく必要がある。治療のため尿測や、褥瘡悪化を防ぐために留置したものは、必要ではなくなった時点で早期に抜去できるように働きかけていく。
●令和4年度 BSIサーベイランス報告
1)R4年度 部位別中心静脈挿入数
・R4年度の当院の挿入数30件。(R3年度40件)
・部位別は内頚14件・PICC 7件・ポート4件・鼠径5件。他院からの既挿入39件、計69件の使用がありました。
・平均挿入数2.5件/月 
2)マキシマムバリアプリコーション遵守率
今年度もMBP遵守率は100%達成しております。介助していた看護師のキャップ未使用が2件ありました。感染1件は挿入時の感染対策の可能性が指摘されております。医師だけでなく介助に当たる看護師においてもキャップの装着は必須となります。
3)使用比と感染者数
使用比は4F病棟25~50パーセンタイル、5F病棟10~25パーセンタイル、6F病棟10パーセンタイル未満であり、使用状況に問題ありません。
4F病棟で感染3名(PICC、内頚、ポート各1件)の発生がありました。感染疑いは1例を除き血液培養検査されています。1例は血小板が低く状況的に難しい事例でした。

3.抗菌薬の適正使用

 抗菌薬の適正使用(患者予後の改善・耐性菌抑制・医療費軽減)の推進に為に感染防止対策チーム(医師(ICD)、薬剤師、検査技師、看護師)を中心に活動しています。当院では特定抗菌薬については使用許可制にして対応しております。
個々の患者に対して主治医が抗菌薬を使用する際、最大限の治療効果を導くことが出来ると同時に、有害事象(副作用や耐性菌の出現)を出来るだけ最小限にとどめ、いち早く感染症治療が完了(治療の最適化)出来るように、診療科の枠を超えた支援を行っています。

●抗菌薬の使用量調査
●特定(広域)抗菌薬の許可制
●抗菌薬ラウンド:特定(広域)抗菌薬
4、血液培養検査について
1)血液培養の検査件数、陽性件数
血液培養は血流感染が疑われる場合、早期診断が患者予後を決定するためにその診断ツールとしてあります。血液培養の陽性判定により、感染性の病因の存在を確認でき、起因菌を同定し、薬剤感受性検査結果からその細菌に効く薬剤を選択し、効果的な治療をすることができます。これにより患者予後の改善・入院日数の短縮・抗菌薬の不適切使用の防止に役立てています。
2)血液培養実施時の 2 セット実施率
血液培養の実施においては 1 セットのみの場合の偽陽性による過剰治療を防ぐため、2 セット以上行うことが推奨されています。本指標は、血液培養を行う際に2 セット以上の検査が実施された割合を示しています。
血液培養2セット率年次推移
3)血液培養のコンタミネーションについて
血液培養検査の採血時に皮膚に存在する常在菌などを混入させてしまうと、本来の敗血症の起炎菌とは別な菌での感染症と誤診されてしまう可能性があります。このため血液培養のコンタミネーション率は、2%以内が適切であるとされており、コンタミネーション率は低い値を維持して信頼できる結果を提供できよう努めています。
血液培養陽性率・コンタミ率年次推移

実績

医療安全管理研修会 実績

研修会開催受講人数受講率
2020年度第1回医療安全管理研修会職員467名
委託業者34名
99.0%
2020年度第2回医療安全管理研修会職員523名
委託業者39名
95.9%
2021年度第1回医療安全管理研修会職員507名
委託業者40名
99.0%
2021年度第2回医療安全管理研修会職員508名
委託業者26名
98.6%
2022年度第1回医療安全管理研修会職員536名
委託業者18名
99.2%
2022年度第2回医療安全管理研修会職員494名
委託業者24名
94.8%
2023年度第1回医療安全管理委員会職員541名
委託業者72名
98.5%
2023年度第2回医療安全管理委員会職員524名
委託業者65名
98.9%

院内感染対策研修会

研修会受講者数受講率
2020年度第1回院内感染対策研修会職員435名90%
2020年度第2回院内感染対策研修会職員450名
委託業者38名
99%
2021年度第1回院内感染対策研修会職員505名99%
2021年度第2回院内感染対策研修会職員481名
委託業者28名
97%
2022年度第1回院内感染対策研修会職員532名
委託業者43名
97.4%
2022年度第2回院内感染対策研修会職員406名
委託業者20名
74%
2023年度第1回院内感染対策研修会職員541名
委託業者71名
95.8%
2023年度第2回院内感染対策研修会職員553名
委託業者41名
95.5%
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